Hebikuzure's Tech Memo

2015年1月25日

Project Spartan と Windows 10

Filed under: Internet Explorer — hebikuzure @ 8:42 午後

Project Spartan and the Windows 10 January Preview Build
http://blogs.msdn.com/b/ie/archive/2015/01/22/project-spartan-and-the-windows-10-january-preview-build.aspx


1月21日 (日本時間1月22日早朝) に行われたメディア ブリーフィングで、今年後半にリリースが予定されている Windows 10 についての新情報が数多く明らかにされましたが、Web ブラウザーについても "Project Spartan" の発表がありました。その場では詳しく分からなかった点を含め、IEBlog に情報が掲載されましたので、それについてまとめておきます。

2117.psatwjpb-image1
(IEBlog から引用)

まず Windows 10 には "Project Spartan" と呼ばれる (コードネームなので実際に "Spartan" という名称になるかどうかはまだわかりません) 新しい Web ブラウザーが搭載されます。このブラウザーは PC、タブレット、2in1、スマートフォンに渡る Windows 10 がサポートするすべてのデバイスに適合するようユーザー インターフェースが新たに設計されており、キーボード/マウス、タッチ、音声認識などの方法で操作することができます。

0435.psatwjpb-image2 8865.psatwjpb-image5
(IEBlog から引用)

Spartan は Web 標準に準拠した新しいレンダリング エンジン (EdgeHTML) を利用し、Web コンテンツを Chrome や Firefox などの他のブラウザーとできるだけ同じようにレンダリングし、同じように動作させることができます。とはいえ企業環境ではまだ古い Web アプリケーション / Web システムを利用している場合も少なくないので、Windows に搭載されるブラウザーには後方互換性も必要です。そのため Spartan ではイントラネット ゾーンのサイト、エンタープライズ モードを指定したサイト (、そしておそらく互換表示を指定したサイト) では従来の Internet Explorer 11 と同じ機能を持つレンダリング エンジン (MSHTML) を利用します。これにより、一つのブラウザーで最新の Web 標準 / 相互運用性のメリットと、後方互換を両立させることができるのです。

02 (Windows 7 / Windows 8.1 上の IE11 の場合)

01 (Windows 10 の Spartan の場合)

なお、EdgeHTML が利用される場合、ブラウザーからサーバーに送信されるユーザー エージェント文字列は、以下のようなものになります (製品版では若干の変更があるかもしれません)

Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; WOW64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/39.0.2171.71 Safari/537.36 Edge/12.0

これを見れば、もやはサーバー側で「ブラウザーが何か」を気にするようのはナンセンス、とも思えますね。

また Spartan では カスタム ActiveX コントロールや BHO (Browser Helper Object、COM ベースのブラウザー拡張) はサポートされないようです (Windows 8.1 のイマーシブ IE のように Flash などのメジャーなアドオンは別途何らかの方法でサポートされるでしょう)。そうしたレガシーなテクノロジーに依存するサイト (主に企業内のサイト) のために、Windows 10 では従来の Internet Explorer も利用可能です。ただしこの Internet Explorer も Spartan と同じ方法で、新しいレンダリング エンジン (EdgeHTML) と従来からのレンダリング エンジン (MSHTML) の両方を利用します。

Windows 10 の Internet Explorer (と Spartan) ではさまざまな Web 標準機能が追加される予定ですが、現在最新の Preview Release では以下のサポートが含まれました。それぞれの機能の詳細についてはリンク先を参照してください。

さらに Windows 10 ではこれまでの Windows と異なり、新機能の追加や機能の変更を Windows Update などを通じて随時行い、常に最新の OS として機能するようになります。そのため Spartan (EdgeHTML) についてもリリース後に、他のブラウザーでも採用されているような Web 標準が随時新しい機能が追加されていくことになるでしょう。現在開発中 (従ってリリースに間に合えばの最初から搭載され、そうでなくともいずれ追加される機能) については、以下のページから開発状況を確認することができます。

Internet Explorer Web Platform Status and Roadmap - status.modern.IE

IEBlog の記事では、Web 開発者 (特にコンシューマ向けのパブリックサイトの開発者) に向けて、以下を呼びかけています。

  1. 新しいレンダリング エンジンはどのブラウザーでも同じコードが同じように動作する相互運用性を重視しています。サポートされる標準とそのロードマップを http://status.modern.ie で確認してください
  2. 新しいエンジンでは、公開 Web サイトでの 古い Internet Explorer との後方互換動作はサポートされないので、それに依存しているサイトはモダンな標準に準拠するよう更新してください
  3. 相互運用性の向上には皆さんの助力が必要です。Windows Insider Program または http://remote.modern.ie を利用して、新しいエンジンをテストしてください。相互運用性での問題を見つけたら、ConnectTwitter を使って知らせてください。W3C や他のブラウザー製造者と協力して問題解決に努めていきます

その他のフィードバックも TwitterUserVoice (新機能のリクエスト)、Connect (バグ報告) を通じて行えます。Web 開発者の方も IT プロフェッショナルの方も、ぜひ新しい EdgeHTML を利用し、検証と動作確認を進めてください。


ここからは IEBlog の内容とは直接関係ない、個人的な感想をいくつか記しておきます。

  • Windows 8.1 : Windows 8.1 に Spartan が提供されるかどうかは微妙です。何故ならここまでの情報では、Spartan の動作は Windows 10 で追加される新機能 (例えば Cortana) と密接に関連しているため、Windows 8.1 向けにそれとは無関係の部分だけ切り出すのは難しい可能性が考えられるからです。ただし、Internet Explorer 11 + EdgeHTML の組み合わせて最新の Web 標準に対応させる、というシナリオは十分にあり得ると思います
  • Windows 7 : 上記と同様の理由で、Spartan 自体が提供される可能性は低いと思います。また Windows 7 はメインストリーム サポートが終了している上に Windows 10 への無償アップグレードが提供されることもあり、EdgeHTML が提供されるかどうかも微妙でしょう
  • Spartan での拡張機能 : 公式の情報はありませんが、一部の報道では Spartan は従来の COM ベースの機能拡張 (ActiveX や BHO、ツールバンドなど) ではなく、Chrome や Firefox のようなライトウェイトな拡張を追加する機能が搭載されると言われています。COM ベースの機能拡張をサポートしないのは確定のようなので、この情報は正しいのではと思います
  • 既定のブラウザー : これまでの公式発表からすると Spartan を新しい主力ブラウザーとして扱う姿勢が見えるので、Windows 10 をクリーン インストールした場合は IE ではなく Spartan が既定のブラウザーになると想像しています。ただし以前のバージョンの Windows からアップグレード インストールした場合は、ユーザー選択を優先する趣旨から、アップグレード前の既定のブラウザーがそのまま引き継がれると思います

コメントする »

まだコメントはありません。

RSS feed for comments on this post. TrackBack URI

コメントを残す

WordPress.com Blog.